便秘のタイプ 便秘の薬膳①
病気ではないけれども、すっきりしないと日々快適に過ごせないものの一つに便秘があげられるでしょう。多くの方が悩んでおり、便秘薬や健康食品、改善すると言われる解消法を試すものの、改善がみられない、というケースも少なくありません。また長いあいだ下剤を使用していると、自力で排便できなくなることもあります。
便秘になる場合、何らかの原因で、腸のぜんどう運動が行われていない、腸内の水分が足りない、便の元となるものが少ない(便かす=細菌の死骸)ことによります。腸内環境をよくすることで、お肌の調子だけでなく、免疫力の向上など健康のバロメーターでもあります。
実は、便秘にはいくつもの種類があり、便秘の原因により、改善方法が変わってきます。
たとえば便秘にいいと言われるバナナですが、お通じが良くなる人もいればそうでない人もいます。中医学的にみても、バナナに便秘解消の効果があるのは間違いありませんが、すべてのタイプの便秘に改善効果があるわけではなく、逆に食べるとますます悪化させてしまうタイプの方もいます。
ご自身の便秘のタイプに合わせた改善方法をとることが、便秘解消の重要なポイントです。
便秘には、①食べ過ぎタイプ(熱秘)、②ストレスタイプ(気秘)、③元気がないタイプ(虚秘ー気虚)、④貧血タイプ(虚秘ー血虚)、⑤冷えタイプ(冷秘)の5種類があります。
特に女性は、貧血タイプと冷えタイプが多いようです。
それぞれの特徴と、便秘解消になる代表的な食べ物を紹介します。
便秘のタイプ
① 食べ過ぎタイプ(熱秘)
食べ過ぎたり、脂っこいもの・味の濃いものなどのとり過ぎで、腸の中に熱がこもっており、便が乾燥して排泄されないタイプの便秘です。からだや腸の熱を取り除き、腸内に十分な水分を取り戻すことが改善につながります。
【特徴】
便が乾燥していて固い、便がくさい、おなかがはって痛い、口が乾く、口臭がする、食べ過ぎる、飲酒が多い。からだが熱い、顔が赤い、お小水に熱がある。
ひどくなると、目が赤くなる、イライラして怒りやすくなる。
【便秘解消になる食べ物】
アロエ、バナナ、パイナップル、ルバーブ、センナなど
【注意】
肉類(特に油の多いもの)、味の濃いものはさけた方がよいです。また、一時的に食事の量を減らすことも有効です。
便秘解消にあげている食材は効能が強いものが多いため、その他のタイプの便秘には用いない方がよいです。
② ストレスタイプ(気秘)
ストレスにより気分が詰まってしまい、発散されないことで、お通じも詰まり、便秘になるタイプです。ストレスの緩和が便秘解消に効果的です。
【特徴】
便意あるが排便されない、頻繁にゲップがでる、胸や脇がはりお腹もはって痛い、食欲がない、ストレスがたまっている、イライラする
【便秘解消になる食べ物】
ミカン、きんかんなどの柑橘類(特に皮)、バラ
【注意】
下剤を飲んでも改善されないことが多いタイプです。
③ 元気がないタイプ(虚秘ー気虚)
過労や病後など、からだの元気がなくなり、排便する力が弱まって便秘になるタイプです。特に老年の方や出産後に多くみられます。からだの元気を補うことが重要です。
【特徴】
便意あるが力がなくて排便できない、力を入れると汗がでたり息が切れる、排便後に元気がなくなる(疲れる)、便は乾燥しておらず固くもない、顔色が白い、顔につやがない
【便秘解消になる食べ物】
サツマイモ、はちみつ、松の実、鶏肉など
【注意】
下剤を用いると、慢性的な下痢になってしまったり、体力が奪われてしまう可能性があります。
④ 貧血タイプ(虚秘ー血虚)
貧血によりからだの水分量が少なくなっているため、腸内の水分も少なくなり、便秘になっているタイプです。貧血を改善しながら、腸内の水分も補うことが必要です。生理前後の便秘はこのタイプです。
【特徴】
便意はあるが出にくい、便が乾燥して固い、顔色が悪い(血色がない)、めまいや立ちくらみがする、動悸がする、唇の色がない
【便秘解消になる食べ物】
ほうれん草、落花生、黒ごま、松の実、レバーなど
【注意】
下剤を使用すると、③元気のないタイプの便秘も同時になる可能性があるので、注意が必要です。
⑤ 冷えタイプ(冷秘)
冷えることにより、腸の蠕動運動が弱まり、便秘になるタイプです。もともと冷え性の人の人に多く、①食べ過ぎタイプの便秘とは逆のタイプになります。
お腹やからだを温め、腸のぜんどう運動を促すことが改善につながります。
【特徴】
便がなかなかでない、便意があまりない、便は乾燥しておらず固くない、お腹や背中が冷たい、顔色が白い
【便秘解消になる食べ物】
にら、こしょう、さんしょう(花椒)など
【注意】
バナナなどからだを冷やすものはさけた方がよいでしょう。
※このタイプには、老人性の冷え性(陽虚)も含みますが、ケースとしては多くないため、一般的な冷え性による便秘に対応しています。
なお、定期的に排便されていても、排便されるまでに時間が非常にかかる、便意があってもなかなかでなかったり、すっきりしない、下痢と便秘を繰り返す、といった場合も便秘に含まれます。
また、5つのタイプに分けましたが、同時に複数のタイプになることもあります。
改善に効果があるとされる食べ物などをとって、1週間程度たっても改善されない、または悪化する場合には、体質や原因にあっていないものをとっている可能性が高いです。その場合は、専門医に相談・受診するなどした方がよいでしょう。