はちみつのアメ ー気軽に薬膳①ー
薬膳がからだにいいのはわかるけど、わざわざ作るのも面倒、という方も多いと思います。
薬膳の定義は、漢方薬を使った料理、ではありません。
からだの症状にあわせた食べ物を、おいしく食べられること、そして続けることです。
そんなときに活躍するものの一つがアメです。
アメは立派な薬膳の形態の一つであり、飴類という分類になり、のど飴や半生のフルーツなどが含まれます。
疲れたときやのどが乾燥しているとき、そんな時にオススメなのが、はちみつのアメです。
はちみつはミネラルやビタミンをバランスよく含んでおり、免疫力の向上や腸の善玉菌を増やすことなどで知られています。
中医学でもはちみつは様々な効果があるとされ、例えば、乾燥してでる咳や、高齢の方の乾燥した便秘、疲労回復、乾燥肌、やけどなどに効果があるとされています。
蜂蜜(ハチミツ)
【効能】
肺や肌・腸を潤す、胃腸を丈夫にして機能を高める、痛みを緩和する、解毒する
【適応する症状】
から咳、食欲不振、(乾燥した)便秘、疲労、乾燥肌
※ 0歳児への使用は控えること
はちみつには、ブドウ糖が含まれており、消化吸収が良いことから、疲れた時にすばやく効果があったり、からだの弱い方でもとりやすかったりします。
また、はちみつは抗菌作用が強く賞味期限がないともいわれます。ミイラと一緒に食べれる状態のはちみつが発見されたこともあるそうです。
(開封したものや保存状態の悪いもの、添加物の入っているものはこの限りではありません。)
その他にも、抗がん作用や胃・十二指腸潰瘍への効果があるようです。
ただし、あくまでも糖分ですのでとり過ぎには十分注意してください。
また、糖尿病の方や下痢になりやすい方、そして0歳児への使用は控えた方がよいでしょう。
コンビニやドラッグストアでも見かけますので、上手に活用してみてください。
貝柱とセロリの炒め物 ーイライラ・不眠・高血圧の薬膳ー
中医学では、同じ病気でも違う治療を行ったり、同じ治療でも違う病気を治療したりすることがあります(同病異治(どうびょういち)といいます)。
今回のレシピは、主に二つの症状に効果があります。
症状① 更年期などのイライラや不眠
更年期(更年期障害の症状が出ている人だけでなく、閉経のころや閉経後)になると、人によってはイライラしたり、のぼせやのどの渇き、めまい、不眠などの症状が出ることがあります。
症状② 高血圧
生活習慣や加齢などによって、血管が老化し血圧が高くなります。血管が切れやすくなり、脳梗塞など重い病気を引き起こします。
どちらの症状も中医学では、腎気(腎陰)が減るためと考えられており、ホルモンのバランスが崩れることを示しています。
貝柱(ホタテ)
からだの乾きを潤し、めまいやのどの渇き、食欲不振に効果があります。また、腎を補う作用もあります。
古くから、視力減退に効果があるとされており、これは豊富に含まれるタウリンの働きによるものと考えられています。ほかに、亜鉛や鉄、ビタミンB2など豊富に含みます。タウリンは、食物繊維といっしょに摂るといっそう効果が高まります。
生の貝柱よりも、乾物の貝柱の方が味や栄養・効能ともに優れており、高級食材として知られています。
セロリ(芹菜)
昇った気を降ろす効果があり、めまい、高血圧に効果があるとされています。また、精神安定作用があり、イライラにも効果があるほか、からだの余分な水分を取り除く作用があります。
セロリ独特の香りが苦手、という方もいるかもしれませんが、この香り成分に含まれるアイピンは食欲増進、頭痛などに効果があり、セネリンという成分には精神安定、食欲増進、頭痛に効果があるとされています。茎よりも葉の方が多く含まれています。
なお、セロリには連続して摂り続けると精子を減少させる効果が報告されており、男性不妊の方は控えた方がよいでしょう。
ゆず(柑橘類)
柑橘系のものの多くには、気を通す作用があります。ストレスやイライラがあるときに柑橘系の香りを嗅ぐとスっとするのはそのためです。実よりも皮の方が効果がありますので、無農薬のものや国産のものが手に入ったときはぜひ活用してください。
なお、中華食材として有名な「陳皮(ちんぴ)」はみかんの皮で、同じく気を通す作用があります。
貝柱とセロリの炒め物
<材料> (2人前)
- 干し貝柱 ・・・・ 5個(約20g)
- セロリ(大) ・・・・ 1本
- 塩 ・・・・ 小さじ1/2
- ゆずの皮 ・・・・ 少々
- 片栗粉 ・・・・ 大さじ1(同じ分量の水で溶いておく)
- ごま油 ・・・・ 大さじ1
<作り方>
- 干し貝柱を水にひたひたになる程度に浸し、半日〜1日つけて戻す(急ぐ場合は40度程度のぬるま湯に浸し、ラップをかけ電子レンジで2〜3分加熱する)。戻し汁も使うのでとっておく。
- セロリを5mm程度に切る。
- 熱したフライパンにごま油をひき、セロリとほぐした貝柱を炒め、戻し汁を入れる。
- 塩で味を整え、溶かした片栗粉を入れる。
- 盛りつけ、千切りにしたゆずの皮を散らす。
トウモロコシとハトムギのごはん 夏の薬膳③
日本は他の国に比べて高温多湿であるため、多くの方がからだに水分がたまりやすくなります。湿度が高くなる梅雨の時期はもちろんですが、食べ物や飲み物によっても水分をためやすくなってしまいます。
例えば、甘いものや冷たいもの。アイスクリームや冷たいジュースの飲み過ぎはからだに水分を溜め込み、むくみの原因となります。
からだの中に水分が多くなると、むくみ以外にも様々な影響がでます。例えば、夏バテしたときに食欲がなくなったりしますが、これは暑いからといって、冷たいものや水分や甘いものをとりすぎ、胃の働きが停滞してしまうためです。ほかにも、お小水が出過ぎたり、水分の多い痰が出たりすることもあります。
むくみなど余分な水分を取り除くには、いわゆる利尿作用のあるものが効果的です。有名なものだと、緑茶やキュウリなどがあげられるでしょう。
トウモロコシも利尿作用がある食べ物です。トウモロコシのひげは漢方として用いられていますが、最近はお茶としても定着しており、利尿作用があることをご存知の方も多いでしょう。
消化不良や食欲不振、便秘の改善にも効果があるとされます。また、不飽和脂肪酸であるリノール酸が含まれており、抗酸化作用や血中コレステロールを減らす作用があります。
ハトムギは、薏苡仁ともいわれ、イボ取りに効果があることで有名です。ハトムギも水分代謝に効果があるほか、膿を出す作用に優れています。
最近は、雑穀ごはんのもとなどに含まれていることも多く、スーパーの売り場でもお米の近くにおいてあることもしばしば見かけます。比較的手に入りやすい食材になってきました。
なお、一部の文献には妊婦には用いないこと、とされていますので、妊娠中の方はさけた方がよいでしょう。
ごはんと一緒に入れて炊くだけなので、簡単にできるレシビです。トウモロコシの優しい甘みが上品ですので、会席料理などでも季節のごはんとしてトウモロコシをいれることもあるようです。
トウモロコシとハトムギのごはん
<材料> (3合)
- 白米 ・・・・ 3合
- トウモロコシ ・・・・ 1本
- ハトムギ ・・・・ 大さじ1
- 塩 ・・・・ 小さじ1
<作り方>
- ハトムギと白米を洗い、30分以上水に浸しておく。
- 軸からトウモロコシの実を手でとる。軸も使うためとっておく。
- 1にトウモロコシの実、塩、トウモロコシの軸を炊飯器にいれて通常通り炊く。
トウモロコシの実をとるときですが、トウモロコシの胚芽(軸についている実の部分)に栄養が多く含まれているため、包丁では切らず、できれば手で実をとってください。
また、トウモロコシの軸も一緒に炊くと、トウモロコシの甘みや香りがよくでます。
妊娠中の方は、ハトムギを抜いたレシピにするとよいでしょう。
冬瓜と豚肉のスープ 夏の薬膳②
前回は夏の暑さを取り除くレシピでしたが、今回はそれに加えて、からだの水分を補ったり、汗と一緒に流れ出てしまった”気”を補うレシピです。
夏の暑さがこもったままだと、からだがほてったり、のどがよく渇いたりします。
からだにたまった熱をそのままにしておくと、だるさや頭痛が出てきたり、何となくからだの不調があったり。夏を乗り切れてもいわゆる秋バテになることもあります。
これは、からだの中にこもった熱によってからだの中の水分が少なくなってしまい、からだがほてったり、のどが渇いたりし、ひどくなると何となくイライラしたりします。
また、暑いときには体温を下げようと汗が出ます。こちらも同じくからだの中の水分を減らしますが、中医学では汗と一緒に”気”も流れ出るとされるため、元気がなくなって、からだがだるくなったり、疲れやすくなったりするのです。
冬瓜は、”冬”という字がつきますが、夏が旬のウリ科の野菜です。丸のまま涼しい場所におくと、翌春まで貯蔵できることから”冬瓜”という名前がついたと言われます。*1
暑さを取り除くほか、利尿作用があり、むくみなどを解消します。
なお、冬瓜の皮や種は漢方薬として使われており、種は痰きりや膿をだすのに、皮は利尿に用いられています。
豚肉は、ビタミンB1が多く含まれ、疲労回復によいとされますが、中医学でも、体力回復に用いられ、”気”や血液を補う作用があると考えられています。
また、豚肉はほてったからだの熱を納める作用があります。薬膳の処方の中には、からだの水分や血液が少なくなり、熱をもった状態のときに、豚肉を煮た汁を飲む、というものもあります。*2
冬瓜と豚肉のスープ
<材料> (2〜3人分)
- 冬瓜 ・・・・ 400g (1/4個程度)
- 豚肩ロース ・・・・ 200g
- しょうが ・・・・ ひとかけ
- 塩 ・・・・ 小さじ1/2
- しょうゆ ・・・・ 小さじ1/3
- 水 ・・・・ 400ml
<作り方>
-
豚肉を食べやすい大きさ(3cm程度)にきり、塩をふっておく。
-
冬瓜は、わたと皮をとり、2cm程度のいちょう切りにする。しょうがを薄く切っておく。
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サラダ油を引いた鍋に豚肉をいれ、表面を焼く。水を入れ一煮立ちさせて豚肉をザルにあげる。
-
冬瓜、豚肉、しょうが、水を鍋に入れ、20〜30分煮る。
- 塩、しょうゆで味を整える。
3.は豚肉のあぶらや臭みを取り除きます。
味は薄めにしているため、物足りない場合は、鶏ガラスープを加えてもよいでしょう。
また、煮込む時間がない方や豚肉を柔らかく仕上げたい方は、圧力鍋や土鍋を活用するとよいかと思います。
冬瓜、豚肉どちらもからだを冷やす食材なので、からだが冷えている方にはたくさん食べるのは控えてください。また、豚肉のかわりに、同じく”気”を補う鶏肉にしてもよいでしょう。
特に気になる症状にあわせて、以下のような食材を加えてアレンジしてみてください。
- からだがほてる、のどがかわく:豆腐
- 疲れやすい、だるい:山芋
- 食欲がない:刻みしょうがやシソをそえる
ハイビスカスゼリー 夏の薬膳①
ここ最近は、猛暑日が連日となることも珍しくなくなってきました。
水分補給はもちろんですが、日々の食事で暑さをやわらげるメニューを取り入れて、暑さに負けないよう毎日を過ごしたいものです。
食べ物の中には、夏の暑さをからだから上手に取り除いてくれる食材があります。
ハイビスカスティーやレモンには解暑という作用があり、夏の暑さをからだから取り除いてくれる作用があります。
また、甘酸っぱいものには酸味は汗を止める作用あります。
熱中症予防になりますので、海水浴や遊園地など暑い中外出する前にいただくのがオススメです。
ただし、甘いものや冷たいものの食べ過ぎで胃腸の働きが弱っていたり(いわゆる夏バテで食欲がない状態)、クーラーの効いたオフィスで冷え性になってしまっている方は、たくさん食べないよう気をつけてください。
(からだや胃腸を冷やしすぎたり、からだの中の水分がたまりすぎるためです。)
ハイビスカスゼリー
<材料> (2〜3個分)
- ハイビスカス ・・・・ ティースプーン 山盛り2杯
- レモン ・・・・ 1/2個
- 白砂糖 ・・・・ 大さじ1+1/2
- 粉ゼラチン ・・・・ 10g
- お湯 ・・・・ 2カップ
- ミント ・・・・ 適量
(シロップ)
- 水 ・・・・ 10cc
- 白砂糖 ・・・・ 大さじ1
ハイビスカス、粉ゼラチンは、お使いのものによって量が異なりますので、お使いのものにより調整してください。
<作り方>
-
レモンを搾っておく。果肉も入れておく。(果肉があることで食感にアクセントが出ます)
- ハイビスカスにお湯を注ぎ、2分ほど待ってこす。
- 2に白砂糖をいれ溶かす。1を入れた後、熱いうちに粉ゼラチンを入れ溶かす。
- 3を容器にいれ、あら熱がとれたら冷蔵庫にいれ30分ほど冷やす。
- シロップ用の水と白砂糖を小さめの鍋にいれ、一煮立ちさせて冷やす。
- 4にシロップをかけ、ミントを飾る。
ハイビスカスティーはゼラチンを入れるときれいに赤色が出ません。レモンまたはクエン酸を加えることできれいに赤色が出ます。
ハイビスカスティーの濃さ、甘さ、ゼリーの固さなどはお好みで変更してください。